映画「情熱のピアニズム」公式サイト

#14 RKMさん

2012/10/13 02:34 up!

パワフルでいながら歌心も忘れていない、そして何よりもペトルチアーニの一番の長所で、私の大好きなあのスカーンと抜けるように澄んだピアノの響きが、ガッドの突き上げるドラミングと、二人を支えながらぐいぐいドライブがかかるアンソニー・ジャクソンのベースによく絡み合って…実際に聴いたペトルチアーニのトリオの演奏ではやはりベストだったと思います。
それに演奏中、あんなに気持ちよさそうで充実感に満ちた様子のペトルチアーニを観たこともありません。「スティーブ・ガッドと演奏できるのが光栄でうれしい」というようなことを言っていたような記憶があるのですが、まったくの本心だったと思います。

曲を追う事に観客も沸いていき、これまで観てきた彼のライブでは感じたことのないほどの熱気でした。A列車を聴いたときにはぞくぞくしました。壁際の後ろのほうに座っていたのですが、思わず壁を背に立ち上がって観てしまいました。

その翌年から私はしばらくアメリカの地方都市で暮らしました。ですが多少フランス語がわかるので、TV5というフランス語国際放送で夕方にニュース番組を観るのを日課にしていました。あれはその日のニュースのトップだったと思います。アナウンサーの冒頭の一言が今でも忘れられません。言葉を区切るように”Michel Petrucciani est mort.”と。
ペトルチアーニが長生きできない人だと言われていたことは知っていたので、寿命を全うしたのだろうと思う反面、最後に観たあのトリオの演奏からは信じられない、信じたくない、まだ演奏を聴きたかったという気持ちを打ち消すことはできませんでした。

あれからずいぶん経ち、最近また少しずつ音楽を聴くようになりました。カンヌ映画祭で話題になったというペトルチアーニのドキュメンタリーが日本でも観られるとはうれしい限りです。生きていたら50歳だったんですね。やはり彼は今でも私のアイドルです。

RKM