映画「情熱のピアニズム」公式サイト

#15 正木 晃さん

2012/10/13 02:34 up!

人生を計る物差しは、お金や名声や才能じゃない。無論外見なんかじゃない。それは、かかわり合った人たちなんだよな。他者の人生にどう貢献したか!だと思う。期待があって、貢献がある。貢献があって、次なる期待が生まれる。そうした上向きのエネルギーがあの日のブルーノートにはあった。僕があのライヴで成長したように、ペトちゃんたちも一緒に成長していたんだな。今おぼろげな記憶を頼りに、あの日のことを思い出すと、なんだかとても崇高な気持ちになる。

当時僕は34才。結婚して4年たって、子供が出来なくて、小さな会社への転職を考えていて、そんな中彼のライヴには申し訳ないくらい過剰な期待をしていたのさ。何かが得られるはずだってね。とにかく、僕にとって一番大切なミュージシャンのライヴに、世の中で一番大切なカミさんを連れて行ったんだ。手を伸ばせばペトちゃんに届くほどの距離だったな。いや冷静に考えるともう少し離れていたかもしれない。でも、目の前に彼がいて鍵盤を叩いていたんだ。思い出しただけでも鳥肌がたつね。観衆のみんなが、彼らに感情移入しようとしているのが強く伝わってくる。それに応えて彼らも僕たちみんなの感情に移入してくる。あーあの場にいる人たちすべてが同じ事を思ったのだ。あなたの事が知りたい。私の事も知って欲しい!ってね。素晴らしいよ。そんな経験は始めてさ。一般的に言えばただのピアノトリオのライヴなのに、とてつもなく親密で高価なひとときだったよ。

翌々年の2月のライヴも楽しみにしていたけれど・・・。でも、よかったのかもしれないな。僕はあの日一緒に過ごしたペトちゃんたちに恥じないように、一生懸命生きる事を選んだのだし。こうして元気に楽しく暮らしているのだからね。

正木 晃